GML

ネジを作るためには設計図があると便利です。しかし、ネジの種類ごとに設計者が勝手な描き方で設計図を作成してしまうと、ネジを作る人は混乱してしまいます。そこで、設計図を作るための共通の規則が必要になります。そのような規則を標準といいます。地理データを記述するためのデータ仕様は設計図に当たります。そしてデータ仕様を記述するための規則が地理情報標準です。例えば、XML (Extensible Markup Language)という言語を使って地理データを記述するためには、GMLという国際標準があり、それに従ってGML応用スキーマという仕様書が設計されます。そして、その仕様書に応じて地理データが作られます。GML応用スキーマの例としては、3次元都市モデルのためのCityGML[1]、屋内空間モデルのためのIndoorGML[2]、そして地質情報を記述するためのGeoSciML[3]などがあります。この中でCityGMLは、3次元都市モデルを地理情報として作成するために、OGC (Open Geospatial Consortium)という組織が公開している国際的なGML応用スキーマです。しかし、これを日本国内で利用するには、日本の実情や作成目的に合わせて拡張や制限が必要になることから、CityGMLを踏まえたGML応用スキーマを含む、3D都市モデル標準製品仕様書が国土交通省から公開されており[4]、自治体はこの仕様書に、必要に応じて独自の拡張を加えた仕様を整備すれば、3D都市モデルを作成することができるようになるとしています。

ここでは以後、GMLが応用スキーマを作成するための規則であることを述べ、次に、GMLが準拠している国際的な地理情報規格群を紹介しGMLから地理データまでの相互依存性を図示します。そして最後に補足として、GMLという標準が成立するまでの経緯について触れます。

GMLは、Web技術の標準化を行う国際的な非営利団体W3C (World Wide Web Consortium)が公開しているXMLスキーマの規則に従って、地理情報用のGML応用スキーマを表現するための包括的な規格です。ここでXMLスキーマとは、XMLで記述するデータの構造を記述するための規則です。これによって、異なる分野のGML応用スキーマであっても、GMLに従っている限り、相互の理解が容易になります。GML応用スキーマを設計するには、まず、UML (Unified Modeling Language) で記述されるUML応用スキーマを作成し(UMLについては応用スキーマの用語解説を参照のこと)、次に、一定の規則の下でGMLを、拡張したり制限したりして、GML応用スキーマにします。GML応用スキーマは空間データ製品仕様書に反映され、それに沿ってXMLで記述された地理データを作成できるようにします。

GMLは、さまざまな地理情報規格に従って整備されていますが、その主なものを以下に示します。

ISO/TS 19103: 概念スキーマ言語
この規格は、地理情報の応用スキーマを記述するためにUMLを使用することや、基本的なデータの記述規則を規定しています。GMLは、地物のプロパティに含まれる定量的なデータに与える計測単位や、数や文字列などの基本的なデータ型の構成の規定を、この規格から引用しています。

ISO 19107: 空間スキーマ
この規格は、地物がもつ、位置や形状といった空間的な特性の記述法を示します。GMLは、この規格に含まれる幾何オブジェクトや位相オブジェクトの規定を引用しています。

ISO 19108: 時間スキーマ
この規格は、地物がもつ時間的な特性を記述するための規則を示します。GMLは、この規格に含まれる時間幾何オブジェクト、時間位相オブジェクト、そして暦や時計の日時などを記述するための規定(時間参照系といいます)を引用しています。

ISO 19109: 応用スキーマのための規則
この規格は地物地物間の関係を記述するための包括的な規則を示します。GMLはこの規格に含まれる一般地物モデル(GFM: General Feature Model)を引用しています。

ISO 19111: 座標による空間参照
この規格は、地物の幾何属性がもつ座標が従う座標参照系の規則を示します。GMLはこの規格に示される座標参照系を引用しています。

ISO 19118: 符号化
この規格は、ISO 19100シリーズの国際規格に従うデータを交換するために使用される符号化規則に対する要件を示します。GMLは、この規格に含まれる、XMLによる符号化規則に準拠して、UMLによる応用スキーマをGML応用スキーマに変換することを可能にしています。

ISO 19123: 被覆の幾何と関数のためのスキーマ
この規格は、1次元以上複数の次元をもつ空間中に広がる現象(被覆といいます)を表現するための規則を示します。GMLはこの規格を引用してグリッドデータやランダムな点データをもとにして、内挿法などの関数を使って、任意の位置の特性値(標高や温度など)を求めることができるようにしています。

さて、GMLから地理データまでの相互依存性を図示すると、図1のようになります。

図1 GMLから地理データまでの相互依存性

GMLは、国際的な非政府組織として地理情報関連の標準化をおこなっているOGCが、独自に検討してきたGML ver.3を国際規格に昇格させたいという提案を国際標準化機構(ISO)に提出し、これを受けた地理情報規格(公式の国際標準)を検討する専門委員会(ISO/TC 211)がOGCと共同でプロジェクトチームを編成し、関連する地理情報規格との整合性を調整した結果できた国際規格です[5]。OGCも、これに一致するOGC標準を公開しています[6]。また、この規格は日本語に翻訳され、JIS X 7136として2012年に日本工業規格(現、日本産業規格)になりました[7]。

[参考文献]
[1] OGC (2020) OGC City Geography Markup Language (CityGML) Part 1: Conceptual Model Standard
https://docs.ogc.org/is/20-010/20-010.html
(閲覧 2022-01-11)
[2] OGC (2019) OGC® IndoorGML 1.1
https://docs.ogc.org/is/19-011r4/19-011r4.html
(閲覧 2022-01-11)
[3] OGC (2016) OGC Geoscience Markup Language 4.1 (GeoSciML)
https://docs.opengeospatial.org/is/16-008/16-008.html
(閲覧 2022-01-11)
[4] 国土交通省 (2021) 3D都市モデル導入のためのガイドブック
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/libraries/doc/plateau_doc_0001_ver01.pdf
(閲覧 2022-01-11)
[5] ISO (2020) 19136-1:2020 Geographic information — Geography Markup Language (GML) — Part 1: Fundamentals
https://www.iso.org/standard/75676.html
(閲覧 2022-01-11)
[6] OGC (2007) OpenGIS Geography Markup Language (GML) Encoding Standard
https://www.ogc.org/standards/gml
(閲覧 2022-01-11)
[7] 日本規格協会 (2012) JIS X 7136:2012地理情報―地理マーク付け言語(GML)
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS%20X%207136:2012
(閲覧 2022-01-11)

(2022年01月27日 更新)
(2016年11月07日 初稿)

English

GML(Geography Markup Language)

定義

GMLとは、既存の地理情報の国際規格に従って、さまざまな地理情報の応用スキーマをXMLで記述するための規則です。