構造物の構築や人間生活のためには地盤の安定性や土砂災害など災害発生の可能性についての土地情報が不可欠です。その土地の地形は地質活動や風化、侵食などさまざまな営力の結果であり、地形の特徴からその形成過程や成因、今後の変動の可能性などをある程度推察することができます。
地形判読は、地形図の読図(map reading)や空中写真を利用した空中写真判読(photointerpretation)などにより地形を読み解くことでその成因を考察し、安定性の判定や安定化対策を検討するための基礎技術です。一般に地形学的な地形種(geomorphic type)に区分する「地形分類」とその分布を示した「地形分類図の作成」が基本となりますが、建設分野では崩壊(跡地)、地すべり、岩盤クリープ斜面、崖錐、土石流堆(沖積錐)、遷急線など「今後変動する可能性のある異常地形」の把握が重要です。
つまり地形図や空中写真などの静的情報から今後の地盤変動や安定性などの動的情報を読み解くことが主な目的となります。
例えば、トンネルや道路の計画において、計画ルートが地すべり地を通過する場合、通常の道路工事以外に対策や施工後の維持管理に多大な経費が発生します。このため、地すべり地の存在が設計段階において事前に把握できれば、回避のためのルート検討が可能となります。大縮尺の地形図やルート沿いの狭い範囲の情報で道路設計を実施し、大きな地すべり地形の存在に気付かないで施工段階で苦労する事例は少なくありません。
まさに「木を見て森を見ず」です。また平成26年8月に広島市で発生した土石流災害の被災地は、過去の土石流で形成された土石流扇状地(土石流堆)を山際まで切り開いた造成地で発生しており、土石流が発生しやすい土地である(またはあった)ことは市販の2.5万分の1地形図などの読図で容易に把握できます。ただ土砂災害の発生が分かっても発生時期やその規模の予測は困難です。
地形判読技術は、地形図の読図や空中写真判読などアナログ情報をもとに判読者個人の技術力や経験(スキル)に頼る作業であることから、誰もが高度な地形判読・評価が可能というものではありません。近年では、航空機レーザ測量によるエルザマップ(ELSAMAP)などのデジタル情報から、高精度で分かりやすい地形情報の把握が可能となってきました。また、「応用地形判読士」((一社)全国地質調査業協会連合会)の資格も誕生し、今後地形判読技術の普及と向上および判読技術者の増加が期待されています。
(2014年12月04日 初稿)