岩盤クリープは、大規模な斜面の崩壊や地すべりの発生の前兆現象である可能性があるという点で重要です。岩盤クリープによる変形やゆるみが地山の深くまで及ぶと、移動部分と動かない部分の間にすべり面ができて地すべりとなったり、場合によっては、豪雨や地震によって山体深くから一気に崩壊する深層崩壊のような大規模災害を引き起こしたりする恐れもあります。
その発生メカニズムについては、まだまだ不明な点が多く様々な考え方がありますが、岩盤自体の元々の性質(割れ目が多い、特定方向に弱い)や風化の進行などによって、自身を支える強度が不足したり、山の周囲が盛んに浸食され、大きく取り残された地山が不安定化する場合など、自らの重さに岩盤自身が耐えられなくなったときに起こる現象、ということができるでしょう。
岩盤クリープが生じている箇所では、変形に伴って様々な特徴的な地形(微地形)が見られます。その代表的なものに、二重山稜や線状凹地、小崖地形などがあり、地形図や空中写真、航空レーザ測量による3Dデータなどから、地形判読によって読み取ることができます。
岩盤クリープの場所が判ると、例えば新しい道路のルートを検討する場合であれば、将来、大規模な崩壊が起こる危険性がある箇所などを事前に予測、回避するなど、利用者の安全を守るために役立てることができるようになるのです。
参考文献
千木良雅弘(1998):『災害地質学入門』,pp.134 - 146,近未來社〈Science selection series〉
(2016年11月07日 初稿)