土石流は、河床の土砂を動かそうとする力(せん断力)が、その場に留まろうとする力(摩擦など)を上回ると発生します。せん断力は、河床勾配と流れる水の深さに影響されるので、一定以上の河床勾配(15°程度以上)のところに雨などによって大量の水が供給されると、せん断力が大きくなり土石流が発生します。発生後は、河床勾配が2~3°程度に緩くなるところまで流下して停止します。土石流は降雨による崩壊に起因して発生することがほとんどですが、天然ダム(河道閉塞)決壊や積雪の融解によるものや火山噴火によって引き起こされる場合もあります。噴火に伴う土石流は火山灰を取り込み泥状で流下するため、泥流とも呼ばれます。
平成27年8月の広島市の災害や平成25年10月の伊豆大島の災害などでは、猛烈な降雨により斜面や河床に大量の水が供給されたため、土石流が発生しました。土石流は、先頭部に巨大な石(巨礫)が集中しやすいため破壊力が大きく、自動車ほどのスピード(10m/s~15 m/s程度)で人家のあるところまで一気に到達します。このため、人的被害につながりやすい特徴があります。
わが国では、高度経済成長期以降に都市近郊で宅地造成が進み、山際まで宅地が迫っていることも珍しくありません。先の広島市の事例では、山際の住宅地を土石流が襲い甚大な被害が発生しました。そのような場所では土石流などの自然災害のリスクがあることを十分に認識する必要があります。
(2016年10月21日 初稿)