縮尺

地図の縮尺については,地図上のすべての距離を正しく表現することのできる地図投影法は存在しないため,厳密には1枚の地図の縮尺を1つの数字で表すことはできません。ただし,かなりの小縮尺で比較的広い範囲を表した地図でなければ,近似的に1つの数字で表しても,その違いは無視できます。

デジタル地図では,自由に拡大や縮小して表示することが可能であるため,アナログ地図の縮尺に直接対応する概念はありません。デジタル地図に表現されている内容がどの縮尺のアナログ写真に対応しているかを表す指標として縮尺レベルがあります。これは,対応するアナログ地図の縮尺を分子を1とする分数で表した場合の分母を用いて表します。1/25000地形図に対応するデジタル地図ならば,縮尺レベルは25000です。また,数値地形図では,地図情報レベル(map information level)という指標が用いられています。これは,地物の取得基準,表現分類や位置精度がどの縮尺のアナログ地形図と同じレベルであるかを示すもので,地図情報レベル2500ならば縮尺1/2500の地図と同じレベルで作られていることを示しています。

写真の縮尺についても,被写体全体が写真と平行な平面上にある場合を除けば,被写体上の点までの奥行き方向の距離は異なるため,厳密には1枚の写真の縮尺を1つの数字で表すことはできません。鉛直空中写真の縮尺としては,撮影対象地域の標高がすべて撮影基準面の標高であると仮定した場合に得られる写真の縮尺を用いることが一般的です。なお,デジタル画像では,画像の1画素に対応する被写体上の図形の大きさを,アナログ画像の縮尺の代わりの指標とするのが一般的です。

(2015年11月18日 初稿)

English

scale

定義

単に縮尺といった場合は,地図の縮尺を指すのが一般的です。地図縮尺(map scale)とは,地図上の2点間の距離とこれに対応する地表の2点間の水平距離の比のことです。通常分子を1とする分数(たとえば1/25000)で表します。1を分子とする分数で縮尺を表す場合,分母が小さい方が大縮尺となります。写真の縮尺はその写真を撮影したカメラの焦点距離と被写体までの奥行き方向の距離の比です。