米国の国防総省は、1950年代から世界全体に適用できる測地系の構築を始め、WGS 60、WGS 66、WGS 72、WGS 84を構築してきました。WGS 84は、WGS 72で用いてきた地球楕円体の長半径や扁平率の値の精度が十分でないとわかってきたことにより、1980年代の初めから構築が始まり、1987年1月1日に運用が始まりました。人工衛星によるレーザ測距やVLBIによる計測結果を基にして定められたWGS 84楕円体と、現在の日本における位置の基準となっている世界測地系で用いられているGRS80(Geodetic Reference System 1980、測地基準系1980)楕円体との差は、短半径が約0.1 mm違うだけであり、ほぼ同一の回転楕円体です。当初のWGS 84の原点の位置は地球の重心から約1mずれていましたが、1994年と1996年の2度の改定により、WGS 84の原点の位置と地球の重心との差は10cm以下となり、WGS 84と世界測地系で用いられているITRF(International Terrestrial Reference Frame)座標系(国際地球基準座標系)は実質的に同一の座標系とみなすことができるようになりました。
WGS 84はGPS(Global Positioning System)を始めとする衛星測位の測地系として採用されています。また、1988年には国際水路機関(IHO: International Hydrographic Organization)が海図の作成の基準として、1989年に国際民間航空機関(ICAO: International Civil Aviation Organization)が航空機のナビゲーションの基準として、WGS 84を採用することを決定しています。
(2015年11月16日 初稿)