VLBIは、準星からの電波を用いて、地球規模での2点間(例えば数1000kmも離れた)の相対位置を数ミリメータの高精度で求める計測システムです。
主要機器構成は、地球から数億光年以上も離れている準星からの微弱電波を受信するための大口径のアンテナ(国土地理院の石岡測地観測局には直径13mものアンテナが設置されています)と電波の受信時刻を正確に計測するための原子時計そしてデータ処理装置になります。
測位原理は、準星の位置と観測点間における電波の到達時刻の差(遅延時間)を用いて求める方式です。遅延時間は、受信した電波波形を重ね合わせ時間軸をずらしてゆき、波形が一致した時点を検出することで求めます。この遅延時間に光速を乗じることで行路差(経路差とも言う)とし、3個以上の準星に対して同様の行路差を求めることで三次元ベクトルの算出を行います。電波干渉計の名称は、この波を重ね合わせる技術・装置を干渉計と呼ぶことに由来しています。また、行路差を用いる測位の概念は、測量用のGPSに適用され、GPSの利用分野の拡大のもととなっています。
主な利用分野には、地球の自転状況を観測する国際地球回転・基準系事業などがあります。日本の測地基準を世界測地系に変更した「日本測地系2000」を設定する際には、北海道の新十津川、茨城県の鹿島、和歌山県の海南に設置されたVLBIが用いられ、現実の地球に座標系を結びつける役割を担いました。その後、東日本大震災の地殻変動の影響を解消するために定められた新しい測地基準系「日本測地系2011」を決定する際にも、茨城県のつくば市のVLBI(2017年解体)と海外の複数のVLBIによる国際VLBI観測を行い、ITRF2008地心直交座標系の設定に用いています。
ハワイが日本に年間6cm程度近づいているという地殻変動の検出を行ったのもVLBIの成果です。
(2020年11月26日 更新)
(2015年01月13日 初稿)