ダムの運用上の課題としては、堆砂、濁水、水質(アオコ等による汚染)、冷水の発生対策が挙げられます。その中でも特に、堆砂はダムの主目的である洪水調節機能、利水機能を低下させ、健全なダムの運用、ダムの寿命に影響を及ぼす可能性があります。ダムは、運用開始後100年間継続的に堆砂しても支障の無いように作られていますが、実際には想定以上のペースで土砂が貯まっているダムも多くあります。このため、ダム堆砂測量により、ダムの機能低下を定期的に監視することが大切です。
ダム堆砂測量の手法として、陸上部では一般的な水準測量や航空レーザ測量、水中部では測量船による重錘(レッド)法や音響測深法が考えられます。音響測深法とは、測量船に取り付けた発信機から湖底に向けて音波を発信し、反射して戻ってくるまでの時間から水深を求める方法です。音響測深法には、使用する音波の特性により、細い音響ビームを扇状にいくつも発信する事で広範囲の計測が可能なナローマルチビーム測深法と真下のみ計測可能なシングルビーム測深法に大別されます。
最近では、面的な計測によりデータの三次元化が容易であるナローマルチビーム測深法が主流になっています。三次元データは、高密度、高精度のデータであり、視覚的に理解し易いため、ダム堆砂管理や住民説明としての資料に適しており、今後のダム堆砂の監視手法の主軸になっていくと考えています。
(2019年05月17日 更新)
(2015年11月18日 初稿)