「遺跡」とは過去の人間の活動の痕跡が残る「歴史・文化的な価値を有する場所」です。多くの遺跡には、移動できない「遺構」(建築物や貝塚など)と、移動できる「遺物」(石器や土器など)が含まれます。
遺跡調査とは、たとえその遺跡がなくなってしまっても、地形や地層などの物理的環境、遺構の形状や残存状況、遺物の出土状況など、遺跡を復元することが可能になるような情報を記録することです。これを「記録保存」といいます。この記録の基幹は緯度・経度・標高を含めた「位置情報」になりますから、遺跡調査従事者は同時に測量技術者でもあります。
遺跡調査は通常、調査範囲の地形測量から開始されます(図1)。埋蔵文化財(地下に埋もれた遺跡)の場合、地表の地形と埋没地形が異なることもありますので、とくに複合遺跡(時代が異なる遺跡が異なる地層で積み重なって存在する場合)では遺跡の時期ごとに埋没地形が測量されます。
遺構調査では、その形状、構造、部材の配置状況、埋没状況などが測量・図化されます(図2)。遺構に伴って出土した遺物の位置、遺構との関係性も記録されます。また、遺構に伴わない遺物の出土位置情報も個別に測量されます。
遺跡調査の結果は報告書にとりまとめられて出版され、研究や教育に活用されています。そのような報告書には、遺物の形状や作成方法などを図化した「実測図」と呼ばれるものが掲載されますが、これらの図化にも測量技術が利用されています。
日本では70年代以降、文化財保護法の下、開発に伴う緊急調査が急増して調査の効率化と速度が求められたため、最新鋭の測量技術が応用され続けてきました。写真測量(図3)や三次元スキャナ、点群データ(図4)などの測量技術は現代の遺跡調査にも取り入れられています。
写真の出典は筆者作成の国際文化財パンフレットデータより。写真1・4は国際航業提供。写真2・3は筆者撮影。
(2023年02月08日 更新)
(2018年12月12日 更新)
(2015年11月10日 初稿)