協定世界時とは、国際原子時(TAI)に対して、適宜、うるう秒を挿入または除去して、UT1世界時との違いが±0.9秒を超えないように調整された世界時を指します。今日では、国際原子時(TAI)をベースにした協定世界時(UTC)が広く使われていますが、これは、TAIをベースにしているので、時計の進む速さはTAIと同じです。しかしTAIは国際度量衡局が決めた理論的な時刻なので、太陽が南中してから次の日の南中時までが24時間になるわけではありません。従って、日常生活を営むためには、世界時に基づくUT1の方が便利です。そこで、UT1との違いが±0.9秒を超えないように、UTCには、ときどき閏秒を挿入または除去して、調整しています。ただし、現行方式のUTCが1972年に始まって以来、直近で調整が行われた2017年までは、いずれも1秒挿入による調整であり、UTCとTAIの差は-37秒になります[1]。なお、UTCは国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)が決めた略称であり、特定の国の言語で示されたフルネームの略称ではないようです。ちなみに英語ではCoordinated Universal Timeです[2]。
ところで、UTCは日常生活には便利とされる一方、不定期なうるう秒調整を含むので、これが行われると時間の不連続性が生ずることから、全球測位衛星システム(GNSS)、電気通信、およびエネルギー伝送システムを含むデジタル社会基盤に、深刻な障害をもたらす危険性が生じるという問題が指摘されており、±0.9秒に設定されているUT1とのずれの最大値の見直しが行われています[3]。日常生活であればUT1、科学技術的な時間処理であればTAIが向いているとされますので、UT1とのずれの最大値が広がるということは、科学技術的な利用をより重視することになります。詳細については、うるう秒の用語解説も参照してください。
[参考文献]
[1] 情報通信研究機構、うるう秒実施日一覧、https://jjy.nict.go.jp/QandA/data/leapsec.html
(2023年02月12日 閲覧)
[2] 青木信仰(1992)『時と暦』東京大学出版会、pp.235-240
[3] General Conference on Weights and Measures (CGPM) (2022), Resolution 4 of the 27th CGPM (2022) On the use and future development of UTC
https://www.bipm.org/en/cgpm-2022/resolution-4 (最終閲覧日2023年2月10日)
(2023年02月27日 更新)
(2022年06月24日 初稿)