水系砂防事業や土石流対策では、流域内の荒廃地、渓床や渓岸、山腹などから生産される土砂の量を現地調査や既往の土砂災害実績、航空写真判読結果等から得られる情報を基に推定し、その土砂量を基に計画を策定します。また、近年では平成23年の台風12号により紀伊半島で発生した深層崩壊や伊豆大島で発生した表層崩壊により発生した土砂量も土砂量調査により推定されています。
ここでは、主に水系砂防事業や土石流対策で対象とする既往崩壊地(荒廃地)、既往崩壊地周辺で新たに発生する拡大崩壊(新規拡大崩壊地)、渓床の不安定土砂の再移動に関する調査について取り上げます。
荒廃地から生産される土砂量の調査では、地質区分毎に既往崩壊地においてサンプリング調査を実施して不安定な土砂の厚さを推定し、複数時期の崩壊地判読結果とともに土砂量を算定します。複数時期の場合は、最も崩壊面積が大きい判読結果を用いることが、防災上の観点からよく行われています。
新規拡大崩壊地から生産される土砂量の調査では、複数時期の航空写真を判読し、崩壊地の面積の推移等から今後の崩壊面積を推定し、既往崩壊地のサンプリング調査で得られた不安定な土砂の厚さを乗じて土砂量を算定します。
渓岸や渓床から生産される土砂量の調査では、同じような渓流状況を示す区間ごとに代表的な渓流断面を抽出し、簡易測量(ポール横断計測等)を実施して不安定な土砂の厚さや横断方向の堆積範囲を推定し、渓流長を乗じて算定します。特に、近傍に災害実績がある場合には、その実績を用いて不安定な土砂の厚さを設定する場合があります。
土砂量調査は計画の根底を決定する重要な調査であるため、調査の位置や方法、結果、算定のプロセスなどに不明な点が残らないように整理することが求められています。
参考文献
・河川砂防技術基準(国土交通省水管理・国土保全局)
・砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説(平成 19 年 3 月,国総研資料第 364 号)
・新 砂防工学(平成 3 年 9 月,朝倉書店)
・現代砂防学概論(平成 26 年 4 月,古今書院)
(2019年05月17日 更新)
(2015年11月18日 初稿)