国内では、土壌汚染対策法において、地下水飲用による健康影響の観点から、帯水層の中間深度より地下水試料を採取する方法が示されています。一方、国際規格では、調査目的や対象物質の種類、非水溶性液体(NAPL)の有無、井戸構造、水文地質学的な特性等からパージ・採水方法を選択する必要性が示されており(佐藤他、2014)、また、採水器具や手順等の違いで濃度に影響を与える可能性も報告されています(佐藤・横溝、2012)。実際に採水方法(中間深度採水、不攪乱に近い状態での深度別採水)の違いで地下水中の有害物質濃度に差がみられた例もあり(瀬野他、2013)、土壌・地下水汚染調査において、地下水試料を深度別に不攪乱で採取し、汚染状況を評価する事の重要性を示しています。
採水手順としては、十分パージした井戸内にストレーナ管を挿入し、一定時間静置させた後、1m区間毎に密封し引き上げて、深度別に地下水試料を採取する方法があります。この他にも、低流量のポンプで採水する方法や、地下水中に吸着材等を一定期間設置しておく方法があります。
実汚染サイトに適用することで、帯水層内における地下水濃度の鉛直分布を的確に把握でき、汚染機構の解明や浄化設計に有効な情報となる他、バイオレメディエーション等の原位置浄化の進捗状況の簡易的な評価や、汚染源把握の困難な1,4-ジオキサン等への調査方法としても用いることが可能です。
参考文献
・佐藤徹朗,稲田ゆかり,佐藤秀之,佐藤幸考,設楽和彦,技術標準化部会(2014):既存井戸等からの地下水採取について,第20回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,pp.493-498
・佐藤秀之,横溝秀修(2012):地下水サンプリング方法の違いによる水質への影響,第18回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,pp.341-346
・瀬野光太,井上章,伊藤哲緒,佐藤徹朗(2013):既設観測井戸における深度別不攪乱採水の有効性について,第19回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,pp.131-133
(2015年11月18日 初稿)