バイオスティミュレーションは、微生物そのものを添加するのではなく、現地に生息する微生物を増殖させることによる浄化対策技術です。汚染サイトに微生物の餌となる栄養源を添加するとともに、土壌・地下水環境を微生物の生息に適した環境に維持することでVOCや油類等の有害物質の分解を促進します。
一方、現地に有害物質を分解する菌がいない等により、栄養剤等の添加だけでは浄化効果が得られないような場合には、浄化対象となる有害物質の分解能が確認されている微生物を培養して添加するバイオオーグメンテーションが適しています。欧米ではバイオオーグメンテーションの活用が盛んですが、日本国内においても適正な安全管理をおこなった上で適用される事例が増えており、環境省・経済産業省からはバイオレメディエーションの適正な適用のための指針(利用指針)も定められています。
微生物分解には、酸素がない環境(嫌気環境)を好む微生物による嫌気性分解と、酸素がある環境(好気環境)を好む微生物による好気性分解があり、VOCは嫌気環境で、油類は好気環境で分解されやすいことから、バイオレメディエーションでは対象とする汚染物質に応じてこれらを使い分けて適用することとなります。
土壌・地下水の浄化対策手法としては、これまでは掘削除去が主流でしたが、以下に挙げる理由から原位置浄化、とりわけバイオレメディエーションを適用する事例が増えてきています。
① 浄化コストが安い ⇒ 大規模な掘削工事や土壌の外部処分が不要なため。
② 稼働中の工場でも適用可能 ⇒ 大規模な掘削は不要で、井戸からの注入で対応が可能なため。
③ 環境にやさしい ⇒ 化学反応を用いた浄化方法に比べ、土壌・地下水環境の変化が小さい(微生物を添加した場合でも、有害物質の分解後には自然消滅します)。
④ 余剰物が少ない ⇒ 掘削除去や揚水対策等と比較し、汚染土壌など廃棄物の発生が少なく済みます。
改正土壌汚染対策法においては、掘削除去等、対象地の外に汚染土壌を運搬する手法ではなく、対象地内で浄化等をする工法が望ましいとされていますので、バイオレメディエーション等の原位置浄化技術の普及・促進が期待されています。
参考文献
・環境省HP「バイオレメディエーションとは」
・国際航業HP
(2015年11月18日 初稿)