火山が噴火すると、ほとんどの場合、火山近傍は立ち入りが規制されます。安全に噴火の状況を把握する手法として、航空写真、航空レーザ計測、衛星画像及びUAVを用いた調査があげられ、火山の活動予測や防災対応のための基礎情報取得に貢献できます。
デジタルオルソフォトの活用
2006年3月21日、北海道雌阿寒岳のポンマチネシリ山頂の赤沼火口および北西斜面で小規模な噴火が発生しました。
北西斜面に形成された新火口の位置や泥流の流下範囲を航空写真や既存地形図から正確に特定することは困難でした。そこて、噴火 直後に撮影した航空写真からデジタルオルソフォトを作成しました。デジタルオルソフォトは、既存の地形図 と重ね合わせることができ、新火口や泥流の流下範囲を精度良く把握することができました(図3)。この結果は、雌阿寒岳の火山活動予測に利用されました。
高分解能衛星画像の活用
2004(平成16)年9月1日、浅間山で中規模な爆発的噴火が発生しました。噴石等が火口から2km程度まで飛散するのが観測され、一部では山火事が発生しました。噴石等の分布範囲がどのような形状であるかは、噴石等による災害の傾向を把握するための重要な情報となります。そこで、高分解能衛星画像データ(IKONOS衛星画像)を用いて、2004(平成16)年9月1 日噴火の噴石着弾痕(インパクトクレーター)の分布や、山火事の状況について判読しました)。高分解能衛星画像はライブラリが豊富であるため、災害前後の比較が容易であるほか、噴火の概要を面的に把握することが可能な程度の解像度を有しています(図4)。
航空レーザ計測の活用
火山噴火時の状況把握への活用
桜島火山は、2006(平成18)年6月4日、南岳東斜 面の昭和火口付近の新たな火口から噴火しました。 2001(平成13)年に計測した航空レーザ計測データからELSAMAP6)および断面図を作成し、活発に噴火が起こっている場所か標高750~800m程度であると推定されました(図5)。噴火口の位置や既存の山頂火口との位置関係、火口の形状を把握することは、今後の活動予測に役立ちます。
火山調査への活用
航空レーザ計測を用いた火山地形判読を行うために開発されたELSAMAPは、溶岩流のような標高の微妙な地形変化を判読することに有用です。図6は知床半島に位置する羅臼岳のELSAMAPです。羅臼岳から流れ出た溶岩流、羅臼岳と三ッ峰の間か 東西両方向に流れ出た溶岩流の地形が鮮明に見えます。このような詳細な火山地形の判読は、火山発達史の解明に貢献するほか、ハザードマップ作成の 基礎データとなります。
今後の展望
デジタルオルソフォトおよび衛星画像の利用は、迅速な状況把握に役立ち、防災対応の基礎情報を提供します。
航空レーザ計測は火山防災のための基礎データです。噴火前後の航空レーザ計測データを比較することで、地殻変動や土砂の堆積状況を把握することも可能です。また細密なメッシュを構築できるため、溶岩流や泥流など の詳細なシミュレーションも可能となります。