準天頂衛星システム

準天頂衛星システム (Quasi-Zenith Satellite System)では、2010年に初号機「みちびき」が打ち上げられ、2017年までに合わせて4機 (準天頂衛星3機と静止衛星1機)になるように計画されています。測位衛星システムとしては、米国のGPSが知られていますが、都市部での建物や山間部での樹木の陰になって、測位に必要な最低4機の衛星が確保できなくなることがあります。そこで、日本の天頂付近に、GPSと互換性のある、少なくとも1機の衛星がいつでも (現在は1機のため1日8時間程度)見えるように補完することにより、測位を改善することができます。また、補完機能のほか、サブメータ級やセンチメータ級の測位を補強するサービスや、災害・危機管理通報および安否確認というメッセージングサービスも備えています。

たとえば、GPS衛星は31機打ち上げられていますが、地球全体に配置されているため、一つの地点では、せいぜい6機程度しか見ることができず、建物や樹木の陰で測位に必要な4機に満たないことが、たびたび起こることに、このシステムは対応します。また、サブメータ測位補強サービスでは、歩行者や自転車を対象のナビゲーションでの測位を対象とし、従来、GPSによる安価な1周波の受信機では10 m程度の誤差がありますが、電離層情報等の誤差軽減に役立つ情報も送信することにより、数mの誤差に抑えることができるようになります。センチメータ級測位補強サービスでは、情報化施工や精密農業にも使えるような測量グレードの測位を対象とし、国土地理院の電子基準点のデータを活用することにより、数cmの誤差に抑えることができるようになります。一方、災害・危機管理通報サービスでは、地震、津波、テロ等の緊急時に避難指示情報を送信することができ、安否確認サービスでは、災害時や遭難時等に、近親者等の間で地上の管制局を介して簡易なメッセージのやり取りができます。

4機体制の準天頂衛星に続いて、時期は未定ですが、GPSを含めて他の測位衛星を頼ることなく測位が可能となるように、さらに3機を追加して計7機体制になることも計画されています。このように、準天頂衛星システムが利用できるようになることは、空間情報技術を運用する際に最も重要となる人や物の位置情報がいつでも正確に得られることになり、インフラの維持管理、環境保全、防災・減災を含めて、社会の安心・安全性、快適性、効率性の向上に大いに寄与するものとなります。なお、同様のサービスは、地球に対して8の字を描く軌道を持つ準天頂衛星が上空を通過する東南アジアやオセアニアでの活用も期待されています。

(2014年12月11日 初稿)

English

Quasi-Zenith Satellite System

定義

GPSを補完して、日本の天頂付近に、24時間、少なくとも1機の衛星が見えるようにした衛星測位システムです。