空中写真測量は主として地形図を作成することを目的にして行われます。一方、近接写真測量は、ダムサイトなど空中からでは撮影しきれない地点の地形図や空中写真測量では対応が難しい大縮尺の地形図を作成するために行われるだけでなく、様々な分野で行われています。
近接写真測量は空中写真測量と原理的には変わるものではありません。空中写真測量と同じように、光を用いた非接触の3次元計測手法であり、計測の制約条件が少ない、対象物に与える影響が少ない、瞬間の記録できる、記録性に優れ、短時間に広域を記録できる、などという特徴があります。ただし、写真撮影に関する自由度は空中写真測量よりも高く、空中写真測量では行うことができない複数のカメラによる同時撮影を行うことが可能なため、対象物の瞬間の形状を計測することができます。また、立体物の周囲にカメラを配置することにより、一度に全体の形状を測定することもできます。
地形図作成以外の近接写真測量の利用分野としては、建築物の計測(記録や改修・復元などを目的として行われています)、史跡や文化財の調査や記録、自動車・航空機なの工業製品の検査、構造物の変形の測定(動的な変形も測定できます)、動物や人体の計測、地滑りなどの災害の監視や被害状況の調査、爆発や破壊などの瞬間の現象の記録、交通事故の現場記録をはじめとする司法関係の調査などがあります。水中で撮影された写真や顕微鏡写真などを用いた写真測量や、火星探査車で撮影されたステレオ画像を用いた地形計測なども近接写真測量に含まれます。
(2015年11月18日 初稿)