数値地形解析には大きく2つの役割があります。1つ目は、地形量そのものを定量的・統計的に評価することで、危険斜面の抽出や地形発達プロセスの解明、水文解析などに役立てることができます。また、近年の大規模土砂災害時においては、災害前後2時期の差分解析から地形変化量を把握することにより、迅速かつ効果的な応急対応に活かされています。2つ目は、目的・用途に応じた地形量を表現した地形解析図を作成することで、地形判読用の基図として用いることができます。
数値地形解析が実用化されてきた背景として、PCおよびGISソフトウェアの普及とDEMの整備が大きく関係しています。例えば地形の開析度については、ひと昔前までは紙ベースの地形図に格子線を描き、各格子内の最高標高と現在の標高との差から開析量を求めるといった多大な労力が必要でした。しかし、現在ではGISの機能を利用することで、誰もが容易に広域的な数値地形解析ができるようになりました。また、国土地理院により、50mメッシュや10mメッシュ等のDEMが全国的に整備されたことや、航空レーザ測量による1mメッシュ程度の高精細なDEMを取得することが可能となり、大局的な地形から微地形までを対象とした数値地形解析ができるようになりました。
国土の約7割が山地からなる我が国において、山地・流域災害の防止・軽減のため、GISとDEMを組み合わせた数値地形解析の今後益々の高度化が期待されます。
(2019年05月10日 更新)
(2015年11月18日 初稿)