地理空間情報

地理空間情報 (geospatial information) とは、地球に存在する自然または人工のもの(地物という)を表現する情報です。この言葉は、地理情報、空間情報、地理空間データといった言葉とほとんど同じ意味を持ちますが、厳密にはデータは単に符号の集まりであり、情報は意味が示されるデータを指します。しかし、情報とデータを区別しない例が、見られます。

地球に存在する自然または人工のもの、つまり地物は、通常、境界で区切られる形や、その内部の特性で表現されます。例えば、樹木はその位置を示す点および、樹種や樹高といった特性で表現できるでしょう。また、地形(もしくは土地)や道路は境界で区切られたでこぼこな曲面や、その場所の名称、面積、そして土壌分類などで表現できるでしょう。さらに、建築物は境界面で区切られる立体および、その名称、住所、用途などで表現できるでしょう。ただし、形をもたない地物も考えられます。例えば「大学」は形をもつでしょうか。確かに、大学の土地や建物は形を持ちますが、大学自体は、それらと関連しつつも、それ自体の形を考えることは困難です[1]。しかし、地球に存在する限り、その情報は地理空間情報と考えることができます (図1参照)。また、教員や学生や職員などの大学関係者も、同様に地物とすることができます。

    図1大学とそれに関連する地物の地理空間情報構成(例)

さて、1994年にアメリカのクリントン大統領の名前で『大統領令12906 - 国土空間データ基盤 (地理データ取得及びアクセスの組織化)』[2] が交付されましたが、その中で国土空間データ基盤 (National Spatial Data Infrastructure, NSDI) に収容されるデータは地理空間データと呼ばれました。その定義は以下の通りです。

「地理空間データとは、地球上の自然及び人工の地物および境界の場所や特性を示す情報を意味する。」
‘Geospatial data’ means information that identifies the geographic location and characteristics of natural or constructed features and boundaries on the earth.

この大統領令以後、世界中の国家がNSDIの構築に乗り出し、国際的な機関が地理情報標準の制定や、実際のデータ整備のための共通仕様の検討を始め、それに基づいた地理空間情報の整備を開始しました。例えば国際標準化機構(ISO)は、専門委員会 211(ISO/TC 211 - Geographic information/Geomatics)を1994年に創設し、地理空間情報に関する包括的な国際標準作りを始めました [3]。欧州連合(EU)は、ISOと連携して、欧州の空間データ基盤整備を目的とした法律を検討し、INSPIRE Directive と呼ばれる法律を2007年に施行し、加盟国はそれに基づく地理空間情報の整備を行っています [4]。さらに、日本政府も地理空間情報活用推進基本法 [5] を2007年に制定し、地理空間情報整備とその活用を推進してきました。

2021年現在、行政や民間の事業のデジタル化が、Digital transformation (DX) の名の下で推進され、その基盤となるベースレジストリ、つまり「公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データ」の整備が急務とされています [6]。このようなデータは、様々な法律に準拠する台帳等にあたりますが、その中で都市、固定資産、道路、河川、港湾、空港、そして上下水道、電気、ガス、通信などのライフラインに関わる地理空間情報は、社会のインフラストラクチャとして重要な役割を持ちます。日本においては、これらのデジタル化に関する研究開発は、1970年代以前に始められましたが、近年、地理空間情報を活用して、人流データ分析、都市のデジタルツインの構築、災害対応におけるドローンの利用などが進展していることもあり、政府がベース・レジストリの必要性を再認識し、より包括的な整備に乗り出したものと言えます。

[参考文献]
[1] Morishige Ota, 2017, Conceptual Modeling and its implementation in an education assistance software tool for geographic information technology, International Journal of Cartography, Vol. 3, pp. 201-225, Taylor & Francis, https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/23729333.2017.1308693 (2021年3月19日閲覧)
[2] Federal Geographic Data Committee (FGDC), Executive order 12906 - Coordinating Geographic Data Acquisition and Access: The National Spatial Data Infrastructure, Federal Register Vol. 59, No. 71, April 11, 1994, https://www.fgdc.gov/policyandplanning/executive_order (2021年3月19日閲覧)
[3] International Organization for Standardization (ISO), https://www.iso.org/committee/54904.html (2021年3月19日閲覧)
[4] European Union (EU), INSPIRE Directive, https://inspire.ec.europa.eu/inspire-directive/2 (2021年3月19日閲覧)
[5] 総務省、地理空間情報活用推進基本法、平成19年 (2007)、 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC1000000063_20150801_000000000000000 (2021年3月19日閲覧)
[6] 首相官邸、ベース・レジストリ・ロードマップ(案)、2020、https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/data_strategy_tf/dai2/siryou2-2.pdf (2021年3月19日閲覧)

(2021年04月05日 初稿)

English

Geospatial information

定義

地理空間情報 (geospatial information) とは、地球に存在する自然または人工のもの(地物という)を表現する情報です。この言葉は、地理情報、空間情報、地理空間データといった言葉とほとんど同じ意味を持ちます。