森田喬先生フランス芸術文化勲章受勲


2023年2月2日、フランス大使公邸において、文化参事官Charles-Henri Brosseau氏の主催で、法政大学名誉教授で当社の顧問を長年お勤めの森田喬先生への芸術文化勲章シュバリエ授与式が行われ、国際航業から上席フェロー太田守重(筆者)と中島円LBS担当部長が列席しました。芸術文化勲章は1957年に創設され、フランス共和国文化通信省より与えられる勲章です。フランス文化の紹介者、普及の実務者、あるいは支援した人が叙勲の対象になり、日本からは武満徹(作曲家)、小川洋子(小説家)、松本零士(漫画家)などの著名人をはじめ、学術の場で貢献された方々が受勲しています。「文化」を冠した勲章があるのはフランスと日本だけと、式の後行われたカクテルパーティーの場で、日本語が堪能な参事官が話されていました。この式には、ご家族をはじめ、日本地図学会の熊木洋太会長(専修大学教授、元国土地理院)や学会幹部の方々、日本地理学会の理事長をお勤めの小口高東京大学教授、そして法政大学の先生方や門下生などが参加していました。国際航業もご招待いただきましたが、森田先生はスピーチの中で、当社に勤めていたこともご披露くださいました。

森田先生は、フランス政府の給費留学制度で留学され、当初は都市計画を学んでいましたが、同国の記号論学者でグラフィクス表現研究の第一人者として世界的に有名なジャック・ベルタン先生のもとで、博士号を取得されました。帰国後は文部省(当時)認可の財団法人にお勤めになり、ベルタンの名著『図の記号学』を翻訳出版するなどのお仕事をされ、その後国際航業に数年間ですが所属されました。その間、ベルタンが仮説として提案した「視覚変数(visual variables)」の概念を、アイカメラを使用して実証したり、道路管理センターの立ち上げに関与されたり、デジタル地図サービスPAREAのコンセプトメイキングをされたり、フランスのミシュラン社とデジタル地図を用いた日本ガイドの作成の検討をするなど、さまざまなお仕事をされました。

1994年に法政大学教授になり、当社を退社しましたが、それ以来30年近くに渡り、有益な情報をいただいたり、優秀な卒業生をご紹介くださったり、表現塾におけるプレゼンテーション指導で各地に出向いていただいたり、最近では社内技術シンポジウムで行われるインフォグラフィクスのコンテスト(マップギャラリー)の審査をしていただくなど、顧問として様々なご指導・ご協力をいただいています。また、当社も、先生の活動を、微力ながら応援し続けてきました。

その間、先生は日本学術会議連携会員、日本地図学会会長、国際地図学協会(ICA)副会長などを歴任され、2019年に行われたICAの国際コンファレンスを東京に招致するにあたり、招致委員会の代表をお勤めになりました。筆者も、2015年にリオデジャネイロまで行って、地理情報標準関係のワークショップで口頭発表をする傍らで、招致活動を応援し、この場で、東京でのコンファレンス開催が決定しました。2019年夏の東京コンファレンスでは、お台場の会場に併設された地図展で、秋篠宮ご夫妻をご案内する先生の姿を、ニュースで見た方もおられるのではないでしょうか。先生は現在もフランスの大学・国立図書館・公文書館との共同研究を続けており、そのプロジェクトの推薦で今回の叙勲が決まったそうですが、日本、フランス、そして国際的な立場での貢献が叙勲理由にあがっていました。あらためて、おめでとう御座います。

なお、先生の業績に興味のある方は、2016年にMoGISTから公開した「森田喬の軌跡」というインタビュー映像をご覧いただくことをお勧めします。

(文責)国際航業上席フェロー 太田守重
2023−02−10