強い地震や大雨などにより、山間部では山が崩れて建物や道路に被害を出す土砂災害が発生することがあります。ひとたび災害が起きればできるだけ早く土砂被害の状況を把握する必要がありますが、そのためにこれまでは飛行機から撮影された空中写真を使って崩壊地を判読して、地形図などの図面にその形を書き起こしていました。ただしこの方法は人の目による判読と、地形図に正しく書き起こす熟練の技術が必要であり、広大な山間部を調査するのは大変な労力がかかっていました。
一方で、近年では航空レーザ計測技術が一般的になってきており、災害調査でも地形の変化を調査するために活用されるようになりました。
航空レーザ計測は災害発生直後から空中写真撮影と同時に行われます。このデータを解析することでより早く、正確に崩壊地を抽出する手法として、「崩壊地自動抽出」技術が生まれました。
この技術は森林に覆われた山間部から崩壊地を抽出する手法で、航空レーザ計測で取得されるレーザ点群の高さのばらつきと反射強度を組み合わせて、崩壊地の形状を自動的に取得できるものです。
この技術を利用することで、①短い時間で広域の調査が可能、②位置座標を持ったデータなので地図の重ねあわせが簡単、③作業担当者の負担が大幅に軽減される、④崩壊地の見落としがなくなる、⑤写真では見えづらい谷間の影の部分も調査できる、などの効果がもたらされました。
参考文献
・佐藤匠他(2009):航空レーザスキャナを利用した崩壊地抽出支援手法,先端測量技術(99):31-39
(2019年05月15日 更新)
(2015年11月18日 初稿)