日本の国土は、約73%を山地が占めています。そのため、国民は山地に近接して生活する場面が多く、結果的に国民が土砂災害の被害を受ける可能性は潜在的に高い状況です。国は、毎年頻発する土砂災害の発生状況に鑑み、代表的な土砂移動(がけ崩れ、土石流、地すべり)について危険箇所の抽出基準を定め、各都道府県による5年毎の調査実施を指示してきました。
選定基準は、土地の地形的要素(がけ崩れ:傾斜度30°かつ高さ5m以上の急傾斜地、土石流:谷地形を呈する[谷の幅<奥行き]、地すべり:地すべり地形を呈する)に加えて、土砂移動発生時に人家や公共施設等に被害が及ぶ可能性のある範囲(がけ崩れ:がけ高の2倍[最大50m]、土石流:勾配3°となる地点まで、地すべり:全長の2倍[最大250m])を設定しました。
当初の危険箇所抽出は、一定条件を満たす地区での対策工事実施を見据えたものでした。また、危険箇所の情報(どこで土砂災害が発生し、どの範囲が被害を受ける可能性があるか?)は、現地看板やインターネット、ハザードマップ配布等による公表を通して、国民に対して周知されてきました。
私たちが生活する身の回りを見てみると、がけ地や沢筋の近くなどで、「急傾斜地崩壊危険箇所」「土石流危険渓流」「地すべり危険箇所」といった看板を見かけることがあります。これは、その看板の周辺で、土砂災害の発生する可能性があることを示しています。
現在は、平成13年から施行された「土砂災害防止法」に基づき、主に土砂災害危険箇所の周辺でより詳細な調査が行われています。調査結果に基づく被災想定区域は、法的に指定されて国民に対して公表されるとともに、警戒避難体制の整備や無秩序な宅地開発の抑制に生かされています。
(2015年01月08日 初稿)