複数のレンズを斜め下方の複数の方向に向けて設置して、複数の斜め写真を撮影するための航空アナログカメラは、既に20世紀前半には開発されていましたが、軍用以外では、あまり普及しませんでした。
現在の多方向斜め画像取得システムは、21世紀になって航空デジタルカメラが実用化されてきたのに合わせて、開発されてきました。通常の航空デジタルカメラでは、1組のレンズと撮像素子(CCDやCMOSなど)で構成されるカメラユニットを1セットあるいは複数セット、鉛直下向きに配置し、鉛直画像を撮影します。
これに対し、多方向斜め画像取得システムは、鉛直画像を撮影するカメラユニット以外に、4~12セット程度のカメラユニットを、斜め下方に向けて配置し、複数の斜め下向きの画像を同時に撮影できるようにしています。カメラ斜め下方の360°を撮影できるようにしたシステムもあります。
複数のカメラユニットを1つのカメラボディ(筐体)に組み込んだタイプと、それぞれのカメラユニットは個々のカメラボディ(筐体)に取り付けられ、複数のカメラボディをまとめて1台のカメラとしたタイプがあります。どちらのタイプでも、それぞれのカメラユニットによる画像撮影は同期されるのが一般的です。
多方向斜め画像取得システムで取得された画像は、多くの場合、専用のソフトウェアで処理されます。そのようなソフトウェアを用いると、取得された複数の斜め画像は、それぞれ接合され、つなぎ目がわからないようなテクスチャが付けられた3次元モデルが出力されます。
多方向斜め画像取得システムは、通常の航空カメラでは取得することが難しい建物壁面の画像を容易に取得することができるため、3次元都市モデルやカーナビゲーション用デジタル地図の作成に利用されています。
(2019年05月10日 更新)
(2017年04月14日 初稿)