人は意識・無意識に係らず、目的や関心の範囲内で実世界や仮想世界を捉えています。その関心の範囲が論議領域と呼ばれ、状況や目的に応じて変わります。例えば、土地の購入を検討する場面を考えます。店舗用の土地を検討する方は、駅から近く、大通りに面している土地が理想と考えるとします。その場合、検討する土地は「駅から近い」「大通りに面している」といった特徴をもつべきです。一方、住宅用の土地を検討する方は、日当たりが良く、静かな土地が理想と考えるかもしれません。その際には、検討する土地は「日当たりが良い」「静けさ」といった特徴をもつべきです。以上のように、同じ「土地」という概念も、考える人の目的や関心の範囲(論議領域)によって見方が異なります。
利用する目的に適った地理空間データを作成するために、論議領域を明確にすることが重要です。例えば、ナビゲーション用の地図を作成する場合を考えます。自動車向けと歩行者向けでは、作成するべき道路データの特徴は異なります。自動車向けのデータには、車道のデータや一方通行か否か等の情報が必要です。また、歩行者向けのデータでは、歩道のデータや横断歩道、歩道橋、地下横断歩道などの情報が必要です。このように、論議領域を明確にすることで、関係者(発注者とデータ作成者、等)間で、作成するべき地理空間情報データに関する合意形成を図ることが可能となります。
参考文献
日本測量調査技術協会(2009): JISX7109地理情報-応用スキーマのための規則, p.4, 日本規格協会
日本測量調査技術協会(2016): 地理情報標準認定資格制度 中級技術者講習テキスト 科目4.UMLクラス図演習・応用スキーマ演習, pp. 4-8
(2019年05月10日 更新)
(2016年11月02日 初稿)