SAR(合成開口レーダ)は、マイクロ波を地面に当て、返ってくる「位相」を観測することができます。同じ場所から観測した画像は、地面までの距離が同じであるため「位相」も同じになります。しかし、もし地面が何かの要因で動いていると「位相」に違いが生まれます。位相の違いは、衛星から地面までの距離をマイクロ波の波長で割った「余り」の長さの違いを意味します。この2時期の「位相」の差分である「位相差」を用いることで地面の動きを測る技術を差分干渉SARと呼びます。この技術を用いると、数mmから数cmの微小な動きを測ることができます。
この技術を用いることで、いままでは電子基準点で点でしか測れなかった地殻変動を広範囲で面として計測することができます。特に地震による地殻変動や地盤沈下など広域の地盤の動きを測ることに適しています。図1は2008年に発生した岩手・宮城内陸地震の変位の結果です。虹色が一周すると地面が11.8cm動いたことを示します。このような画像を干渉画像といいます。これにより、震源の南北に断層が通っていることや、断層の東西で2m以上のズレがあることがわかります。
また、2回以上のもっと多くの観測データを用いることで、より精度の高い変位計測を行うことができます。図2は地盤沈下を観測した事例です。従来から地盤沈下観測に用いられた水準測量に比べても高い精度で広域の沈下量を観測できます。また、図3はダムの沈下を計測した事例です。最近では、より狭い範囲を対象とした干渉SARの適用が進められています。
参考文献
・佐藤弘行ら(2014), 衛星SARによる構造物の変位監視技術 ~フィルダムを事例として~,土木技術資料,Vol.56,No.1.
(2019年05月08日 更新)
(2015年11月16日 初稿)