SAR(合成開口レーダ)とは、マイクロ波を地面に当て、返ってくる信号の強さや時間から地表を観測するセンサのことです。移動しながら同じ場所を何度も観測した信号を組み合わせる合成開口処理により、高い分解能で地表を観測することができます。人工衛星や航空機に搭載するタイプが一般的ですが、近年では、地上設置型のSARも用いられています。マイクロ波は電磁波の一種で、人の目で見える光(可視光)より波長が長く、無線や携帯電話、降雨レーダにも用いられています。雲を通り抜け、暗闇でも撮影できる特性をもっているため、普通のカメラでは撮影できない夜間や雲の下の様子も見ることができます。
いつでも観測ができるため、災害が起きた時にはいち早く被災地を観測することができます。また、冬の厚い雲の下も観測できるため、海上保安庁ではSARを使ってオホーツク海の流氷の流れを監視しており、航行の安全・安心に貢献しています。ほかにも、森林が減っていることを確認したり、砂漠の中から新たな遺跡を発見したりと、さまざまな分野で用いられています。SARの特殊な使い方として、干渉SAR(Interferometry SAR)という技術があります。この技術を用いると、地盤沈下や大地震による地殻変動の様子を調べることができます。
日本の衛星では、1992年から1998年まで運用された地球資源衛星「ふよう」や、2006年から2011年まで運用された陸域観測技術衛星「だいち」にSARが搭載され、東日本大震災の被災状況把握等で活躍しました。2014年には、さらに高性能なSARを搭載した陸域観測技術衛星「だいち2号」が打ち上げられ、迅速な被災状況把握や社会インフラのモニタリングなどSARのさらなる利活用が期待されています。
(2015年03月04日 初稿)