植生図は植生の把握をはじめ、気候などその土地の地理的要因と植生の関係の分析や、過去との比較による植生の変遷、生息・生育する野生生物などを考える材料となります。そのため、環境アセスメント、自然科学などの研究、森林の管理活動など様々な場面で利用されています。潜在自然植生図や原植生図からは、その土地の地形、土壌などの植物の生育地としての条件や、人為的影響の程度などが把握でき、自然保護活動や環境教育などに利用されています。
では、植生図はどのようにつくられるのでしょうか。現存植生図では、まず最新の空中写真を用いて植生を目で区分し、判読図を作成します。そして現地調査によって、判読図と実際の植生の対応を把握し、植生図を完成させます。近年は衛星データを用いて、植物の光の反射特性からNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)などの指標となる値を算出し、効率的に植生を区分する方法もとられるようになってきています。
日本では1973年度以降、環境省が主体となり、全国統一様式で現存植生図の作成・管理がされています。当初の縮尺は1/200,000でしたが、環境アセスメントの基礎資料としての利用も踏まえ、1999年度以降は1/25,000の植生図が作成されています。これらの植生図は環境省自然環境局生物多様性センターが公開しています。
日本は南北に長く複数の気候帯を持ち、降水量が豊かであり、環境に応じた多様な植物が生育しています。植生図は日本の自然環境を理解するための重要なツールといえます。
(2015年11月18日 初稿)