深層崩壊は発生頻度の低い現象であるものの、規模が大きいことから、ひとたび発生すると広域に影響を及ぼす恐れがあります。崩壊土砂による直接的な被害のみならず、多量の土砂によって河道を閉塞し、その上流には湛水による浸水被害を及ぼし、河道閉塞が決壊した場合には下流の広い範囲にわたって洪水氾濫被害を及ぼす恐れがあります。
このように深層崩壊は、被害範囲が広域に及び、かつ二次的な被害も想定されることから、危険性の高い斜面を抽出したうえで崩壊土砂の流下・堆積範囲を想定し、避難計画や防災訓練、河道閉塞対応訓練等の事前対策に取り組んでおくことが重要です。
深層崩壊による崩壊土砂の流下・堆積範囲は、流下する河道の幅や勾配等の地形条件によって異なってきます。そのため、複雑な地形条件下でも一定の根拠をもって予測するうえで、数値シミュレーションを用いることが有効です。深層崩壊のシミュレーションモデルには、例えば土木研究所(吉松ら,1992)が開発したLSFLOWがあります。LSFLOWは、崩壊等により土砂が移動を開始し、流下、堆積に至るまでの一連の過程を、土砂を流体とみなして計算するモデルです。
深層崩壊シミュレーションでは、例えば対岸への土砂の乗り上げや、河道閉塞の高さ・長さといった形状など、予測の難しい現象に対しても一定の根拠に基づき評価することが可能となります。
参考文献
・吉松弘行・近藤観慈・石濱茂・綱木亮介・小嶋伸一・中村浩之(1992):準三次元地すべり運動解析プログラムによる地すべり性崩壊の被害範囲の予測,土木研究所資料,No3057
(2019年05月10日 更新)
(2015年11月18日 初稿)