数値シミュレーションでは、現在のコンピュータの能力に限界があるために、現実の自然や社会現象のなかから一部を切り出し、解析対象を限定します。限定した解析対象の空間的な特徴と時間的な変化の法則を調べ、データとプログラムでコンピュータの中に模型つまりモデルを作ります。そして、今までの観測事実が再現できるようにモデルを改良します。改良したモデルに将来起こるであろうさまざま刺激を与え反応を計算します。この計算結果に今までの定性的・定量的な知識を加えて、自然現象や社会現象の予測を行います。この一連の情報処理を数値シミュレーションといいます。
私たちが生活する中で命にかかわる重要な情報が数値シミュレーションで作られ提供されています。それは地方自治体が公表している洪水、高潮、津波ハザードマップです。ハザードマップは数値シミュレーションを使って浸水区域を予測して作成されています。火山のハザードマップも溶岩流、火砕流、降灰、噴石、土石流、泥流などの到達範囲を数値シミュレーションで予測して作られています。
コンピュータの発達に伴い、数値シミュレーションの結果を見る機会がますます増えてきています。数値シミュレーションの結果を見る場合に注意しなければならない重要なことがあります。それは数値シミュレーションでは台風、地震、火山噴火の規模を想定して被害の予測をおこなっていることです。発生する災害のほとんどは想定内ですが、東日本大震災のように想定外の災害もまれに発生します。数値シミュレーション結果を過信することなく、活用するという積極的な姿勢で数値シミュレーションの結果を見ることが大切です。
(2014年12月04日 初稿)