別項に示す可視・反射赤外リモートセンシングにおいて観測する電磁波(主に反射波)の放射源は太陽です。太陽は約0.5 μmをピークとする電磁波を放射しています。一方、常温の地表物体から放射される電磁波は約10 μmにピークがあります。太陽光の反射と常温の地表物体の放射とは赤外域では混在し、両者は3 μm付近でほぼ均衡しています。
熱赤外リモートセンシングは、常温の地表物体の放射が卓越する3 μmより長い波長の赤外域の電磁波を用いるもので、物体からの放射を観測します。この放射のエネルギーは物体の温度に依存するものであるため、これを熱放射と呼んでいます。熱赤外リモートセンシングでは、対象物の温度を測定することができます。図1は、衛星観測で求められた地表面の温度分布をカラー画像として表したものです。
このように、熱赤外リモートセンシングで得られたデータはカラー画像として表示されることがよくありますが、通常観測されるのは対象物の温度であるため、このカラー画像は温度分布がよくわかるように色づけされたもので、実際の物体の色を表してはいません。
熱赤外リモートセンシングは、都市の地表面温度分布を測定することにより、ヒートアイランド現象の解明に利用されたり、海水面の温度分布を測定することにより、黒潮や親潮などの海流の変動の把握に利用されたりしています。また、可視・反射赤外リモートセンシングと異なり、夜でも地表あるいは水面の温度の測定ができます。気象衛星では、夜間の雲の分布を調べるために、熱赤外センサで取得されたデータを利用しています。測定された温度から、雲と地表の判別をしたり、雲の温度から雲の高さを求めたりしています。
(2015年11月18日 初稿)