地すべり斜面の安定解析では、従来は、地すべりブロックの代表的な断面を対象に、二次元解析を行うことが主流でした。二次元解析は、比較的簡単な計算手法を用いるため、計算結果が早く出たり、費用が比較的安価であるといった利点があります。しかし一方、対象となる地すべりブロックを直方体とみなして計算するため、安定させるために必要な力(対策工の規模)が、現実よりも過大に計算されがちです。
そこで最近では、より実態に即した解析手法のひとつとして、三次元安定解析が実施されることも多くなってきています。
ただし三次元解析を精度良く行うためには、元となる情報量(地すべりの形状、地下水位など)がたくさん必要となります。多くの情報量を得るためには、事前調査の規模も大きくなりがちですし、また得られたデータの入力にも時間や手間を要します。そのため、三次元解析を行うかどうかは、それぞれのサイトごとに、費用対効果を考慮しながら決定することが求められます。
また解析に用いるデータの精度向上も不可欠です。地表面については、航空レーザ測量の活用等により、かなり詳細な地形形状を把握することができるようになってきていますが、地下の地質分布や地下水面の形状については、同様のレベルに達していないのが現状です。
今後、ボーリングや観測等の調査解析技術のさらなる向上により、目にみえない地下のようすも精度よく把握することで、三次元安定解析が実施される事例が増えていくものと思われます。三次元安定解析の事例が増えることで、解析精度の向上とともに、計画する対策工の規模がより合理的・経済的になるものと思われます。地すべり等における三次元安定解析は、地すべり事業のトータルコストの縮減や、事業継続の説明責任を果たすためのツールとしての役割も期待されます。
(2015年11月18日 初稿)