移動量(位置の変化量)の時間に関する2階微分が加速度です。ある時間内で連続的に測定された加速度を2回時間積分すると、その時間内での位置の変化量が求められます。このことを利用して、移動の始点に対する終点の相対位置を求める測量手法が慣性測量です。
3次元の相対位置を求めるための慣性測量装置は、航空機用慣性航法装置や宇宙ロケットの慣性誘導装置などと同様に、物体は外力が加わらない限り、静止あるいは等速直線運動を続けるという慣性の法則を応用しています。互いに直交した3軸のそれぞれに加速度計を設置し、基準方向に対する3次元の加速度を測定します。ここで、基準方向を保つため、ジャイロスコープを利用して3軸の姿勢制御を行います。慣性測量で用いられてきた、高速で回転するコマを用いる機械式ジャイロスコープには、回転軸の方向を変えようとする力が働かない限り、慣性の法則により回転軸を変えないという性質があります。この性質を利用して3軸の姿勢制御を行います。ただし、近年用いられてきている光学式ジャイロスコープは、光学的な干渉を利用しており、力学的な慣性は利用してはいません。
慣性測量は、トータルステーションを用いた測量とは異なり、2点間の視通を必要とせず、天候の影響も受けません。また衛星測位とは異なり、上空視界の制約を受けないため、森林の中や地下、あるいは屋内でも位置を測定することができます。ただし、測定精度は、トータルステーションを用いた測量や衛星測位ほど高くないため、他の測量手法が利用できない場合など、補完的に用いられることがほとんどです。
(2016年11月04日 初稿)