改正土壌汚染対策法の施行や企業の環境改善への取組みがなされる中、生産活動の中で幅広く利用されてきたテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンといった塩素系のVOCによる広範囲の土壌・地下水汚染については、その対策には多大な費用を要する場合があり、操業中の工場等においても実施可能な原位置浄化技術への期待が高まっています。
VOCを対象とした原位置浄化技術として、比較的安価である嫌気性バイオスティミュレーションや化学的な分解を起こすフェントン法等が行われていますが、特に粘性土層に浸透・吸着したVOCの浄化は難しく、浄化対策工事完了後に地下水中のVOC濃度がリバウンドしたり、土地改変時に土壌汚染が残存していることが顕在化したりする等の問題が発生し、原位置浄化技術そのものに対する信頼性の低下が懸念されています。
電気発熱法は、「粘性土層のVOC汚染の浄化」という課題を解決すべく、開発された手法で、日本においては㈱島津製作所により技術開発が進められています。
電気発熱法により土壌が発熱する際、土の性質として、礫層や砂層よりも粘性土層の方が温まりやすいという性質があるため、粘性土層が選択的に温まることとなり、「粘性土の土粒子間に強く吸着したVOCの地下水への溶出や気化の促進」、「加温によるガス圧の上昇や水の粘性低下による移動性の向上」等の効果により、これまでの課題であった粘性土層のVOC汚染を効果的に浄化することが可能となります。
(2015年11月18日 初稿)