全排水毒性試験

事業場で使用される化学物質の種類の増加に対し、現行の水質汚濁法防止法による規制では、未規制の物質による生態系への影響があるのではないか、あるいは化学物質の複合的な毒性が評価されていないのではないか、といった懸念があります。これらの懸念に対する新しい排水管理手法がWETです。

日本版WETでは、魚類、甲殻類、藻類の3種の水生生物に与える影響を把握することで生態系への影響を総合的に評価しようと考えています。

WETは、米国や欧州主要各国において既に導入されていること等から、日本でも制度化に向けた検討が開始されています。平成26年3月には、環境省において、生物応答を用いた排水試験方法として以下の3種類の試験方法の詳細やサンプリング方法等が決められました。

「胚・仔魚期の魚類を用いる短期毒性試験」
「ニセネコゼミジンコを用いる繁殖試験」
「淡水藻類を用いる成長阻害試験」

また、平成25年度には、環境省において実態調査が実施され、全国で15の事業所から集められた排水についてWET試験を実施しまいた。これらの排水は、いずれも現行の水質汚濁防止法における排水基準には適合するものでしたが、15事業所中6事業所で改善の必要のあるレベルという結果がでました。これらの結果から、WETが制度化された場合には、排水の改善に苦慮される事業所も多く発生することが予測され、その対応には期間を要することから、制度化される前に対応していくことが重要となります。

平成27年7月に水環境基本計画が閣議決定され、今後制度化に向けた動きが活発になることも予想されます。更に、この新たな排水管理手法を自主的かつ積極的に活用し、①地域コミュニティとの対話ツール、②既に導入済みの欧米企業と同等の環境管理、③制度化前の状況把握等に活用しようとする日本企業が増えていくものと考えられています。

参考文献
環境省(平成26年3月):生物応答を用いた排水試験法(検討案)

(2016年09月14日 初稿)

English

Whole Effluent Toxicity

定義

WET= Whole Effluent Toxicityは、「全排水毒性」と訳され、排水の毒性を個々の有害物質濃度ではなく、生物応答により評価することであり、新たな排水管理手法として近年注目されています。