津波発生時に沿岸域での津波高や甚大な浸水被害を受ける地域が素早く予測できれば、早期の津波避難や被災者の迅速な救援活動に役立ち、多くの人命を救うことができます。津波の波源推定には、沖合や沿岸で観測された津波の水位や流速の情報を用います。これらの津波情報を観測する機器としては、①水位を観測するGPS波浪計や海底設置式の圧力計、②陸上から津波の流速を観測する海洋レーダがあります。
ここでは、津波の波源推定により、津波の数値計算の基となる津波初期水位(海面の隆起・沈降)を直接推定する方法を説明します。
津波の波源推定では、沖合や沿岸で実際に観測される津波は、たくさんの規則正しい周期を持つ小さな波の集まりから成り立っていると考えます。ひとつひとつの小さな波の大きさをそれぞれ変えて足し合わせることで実際に観測される津波を表現できると考えるのです。津波の波源推定では、あらかじめ波源域をたくさんの格子(単位波源、例えば10km四方など)に分割し、それぞれの格子の水位を単位上昇(1m隆起)させて沖合や沿岸で観測される波の水位や流速を計算し、データベースを作成しておきます。実際に津波が発生したときには、観測された津波の水位や流速より、小さな津波の組み合わせとして解析し、波源域格子での上昇量を単位上昇量の比率として求めます。津波の波源推定では、このような手順により津波の初期水位を推定することができます。
(2015年11月18日 初稿)