長尺水平ボーリング

トンネルの設計・施工事前調査を目的とした地質調査では、通常計画トンネルに平行して地表から最長100mほどの長さの水平ボーリングが実施されます。しかし、山地などの急峻な地形をなす場所で調査を行う場合、通常の水平ボーリングではトンネル両坑口付近の情報しか得られません。一方、長尺水平ボーリングの場合は数百m以上の掘削が可能なため、より前方の地質情報(岩石の種類、亀裂の状態や頻度など)や湧水情報(水量や水質、湧水地点など)を早期に得ることができます。このことにより、設計・施工時のリスクを低減することが可能となります。さらにトンネルの施工が進んだ際に、切羽前方に新たな長尺水平ボーリングを実施することで、施工に必要な調査を切れ目なく行うことが可能となります。
 長尺水平ボーリングを行う際は、掘削方向をコントロールできる機能が必要となります。そのため、ボーリングマシンに計測器と制御装置を組み込ませ、掘進方向を確認・修正しつつ掘り進めることで、計画トンネルに平行したボーリング掘削を可能にしています。
また、ボーリング掘削時に得られた地質試料(コアボーリングの場合は岩石試料、ノンコアボーリングの場合は掘削の際に排出される掘り屑)や、掘削時に取得されるボーリングマシンの運転状況を記録した情報を基に、トンネルの設計・施工時に必要な地質評価を行う取り組みもなされています。

参考文献
二村亨他( 2010 ):先進ボーリング技術のブレークスルーを目指して―長尺・高速掘進・孔曲がり制御などの技術開発―.トンネルと地下,Vol.41 (8):pp.45-55.
萩原博之他( 2011 ):先進ボーリング技術のブレークスルーを目指して(その2)―削孔データによる地山評価手法の検討―.トンネルと地下,Vol.42 (12):pp.53-61.

(2016年11月11日 初稿)

English

Long Horizontal Boring

定義

長尺水平ボーリングは地質調査手法の一つで、計画トンネルに平行して行う数百m以上の長さのボーリングを指します。トンネル施工中に課題となる切羽前方の地質や湧水等の情報を事前に把握し、設計・施工時のリスク低減を主目的とします。通常は、コア(岩石試料)を採取するボーリングを行いますが、より短期間でボーリングを完了するためにノンコアでボーリングがなされることもあります。掘削延長が長くなると、掘削方向をコントロールできる機能が必要とされます。