我が国は、四方を海で囲まれ、古来よりしばしば大きな津波災害を経験してきました。明治以降では、1896年明治三陸津波を始めとして、2011年東日本大震災までの合計9回の津波により、多くの国民の生命と財産が失われ、その都度、色々な津波対策が講じられてきました。
特に、1993年に発生した北海道南西沖津波による甚大な被害以降には、津波防波堤や津波避難タワーといったハード対策(施設整備)が進められました。さらに、1995年の阪神大震災以降には、地震防災対策におけるソフト対策(地域防災計画、避難情報など)の重要性が叫ばれたため、国は「津波・高潮ハザードマップマニュアル」を策定し、津波ハザードマップの整備が全国的に進んできました。
しかし、2003年の東日本大震災の津波は、既設の防波堤や海岸堤防等を打ち砕き、従来の浸水予想区域を越えて押し寄せ、指定されていた避難所自体をのみ込んでしまう大惨事となりました。このため、津波ハザードマップは、過去に発生した地震・津波の規模にとらわれず、発生頻度は低いが発生すれば大きな被害が及ぶ最大規模の地震・津波による被害を想定することになりました。そして、現在では、最大規模の地震・津波に対応したハード対策とともに、情報伝達の確保や緊急避難体制の強化といったソフト対策のひとつとして、住民参加による津波避難ワークショップや津波避難訓練も踏まえた津波ハザードマップが多くの沿岸市町村で作成されています。
参考文献
・津波浸水想定の設定の手引きVer.2.00(平成24年10 月 国土交通省水管理・国土保全局海岸室他)
(2015年11月18日 初稿)