一般的に地下水流向流速調査は、水資源として地下水を利用するために地下水の流動状況を把握することを目的として実施する場合をはじめ、土壌・地下水汚染が汚染源から非汚染範囲に拡散するリスクを評価することを目的として実施する場合や、建設工事等で設置する地中構造物の地下水への影響確認や、設置構造物の規格を設計することを目的として実施されます。その調査方法は、観測井において流向・流速計等の計測機器を用いて測定する方法と、観測井を用いず、地形地質等の既存資料や文献を基に推測する方法の2つに分類されます。
観測井を用いて流向・流速を測定する場合は、1本の井戸のみで調査を実施する単孔方法と、2本以上複数の井戸を用いて調査を実施する多孔方法があります。単孔方法の場合は特定の物質や熱を注入して、電気抵抗や熱量の差異を計測して推定する方法や、レーザー光又は赤外線カメラを用いて微粒子の挙動を計測して推測する方法が挙げられます。一方、多孔方法の場合は1本の井戸から特定の物質を注入して、他方の井戸への移動状況を測定して推測する方法や、同時期に地下水位を測定して水位標高の等値線図及び動水勾配から推測する方法が挙げられます。
一方観測井を用いず、地形地質の情報から地下水の流向流速を推測することが可能な場合もあります。地下水は基本的に高いところから低いところに流れるため、当該特性を加味し、帯水層の分布状況を確認できる地質情報や、地域的な地形勾配が確認できる地形情報をもとに地域の大局的な流向流速を推測します。ただし、水圧がかかっている場合は高低差と関わりがないことや、局所的に地質構造が異なる場合は、大局的な流向流速と異なる挙動を示す可能性があるため、対象となる土地の地下水流向流速方向を把握するためには、対象敷地における観測井を用いて調査を実施することが望ましいと判断されます。
参考文献
・環境省 地下水の流向の把握について
・地下水流動保全のための環境影響評価と対策 社団法人地盤工学会 第3章地下水流動保全のための調査
(2015年11月18日 初稿)