風力発電システムの新たな設置先として、洋上が注目されています。洋上風力発電システムには、沿岸域の比較的浅い海底に固定する着床式と、沖合いでいかだを浮かべてアンカーで固定する浮体式があります。太陽光発電と異なり夜間でも発電できることなどから、海に囲まれた我が国における非常に有効な電力供給手段になるとの期待が高まっています。
洋上風力発電の導入拡大の背景には、陸上での風力発電の開発余地が減少してきたことが挙げられます。欧州では従来から導入が進められており、風力発電機、海洋土木工事、関連設備及び海底ケーブル等、関連産業の育成にも力が入れられています。
課題については、設置場所が洋上であるため建設や点検時にも陸上とは異なる難しさがあります。風車を大型化することによる資機材や建設のコストの相対的な低減、機材の軽量化によるメンテナンスコストの削減に関する実証も進められています。また、漁業や船舶航行への影響回避への対応や台風の襲来など厳しい気象環境下にある我が国独自の技術開発も求められます。さらに、建設時において、風車をはじめとした資機材の物流、基礎の製作などの拠点となる港や船舶及び電力系統接続のための送電インフラを整備することも重要です。
我が国独自の課題解決によって培われる洋上風力発電の技術開発は、我が国の技術的優位性につながり、諸外国も含めた洋上風力発電の導入拡大に寄与することが期待されます。
参考文献
・NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版
・NEDO 洋上風力発電の取組
(2015年11月18日 初稿)