災害情報は、同一事象が時系列変化(被害発生⇒応急措置⇒本措置の各段階)すると同時に、幹線道路網の通行可能・通行規制情報の把握が、初動体制の確立・応急対策の実施の判断に大きな影響を及ぼす特性を有しています。IT技術が高度化した現代では、指揮命令系統の異なる各機関が保有し、時々刻々変化する情報をネットワークを介して接続し、各個別システム内の被害情報、対策実施状況等を、リアルタイムに相互に情報共有することが可能となっています。このような仕組みが防災情報共有システムと呼ばれるものです。
以前は、時系列変化する災害事象をホワイトボードや模造紙に順番に書き込んだり、付箋を貼るなどの原始的な方法で情報の遷移を把握する方式が主流でした。この方式では、最新の状況とは乖離した内容の過去情報も盤面に残る欠点があり、離れた拠点間では情報把握の度合を均質に保つことは難しくなります。このため、地理情報表現技術や航空写真なども利用した地図データの充実により、対象発生位置を視覚的にわかりやすく地図上に表現し、併せて文字情報で時系列の情報変更履歴を追跡できるような防災情報共有システムが実用化されています。
当初は防災関係者・関係機関内の情報共有、いわば閉じた枠内の情報相互共有機能を主目的とした形で開発されましたが、現在では、地上デジタルテレビ放送、SNS(例えばTwitter)、災害情報公開サーバなどへのソーシャルメディアを通じて、市民への情報配信・情報公開機能を有するシステム、あるいは、特定地域ごとのより精密な気象予測モデルと連動した狭域の予報・予測結果とも連動するようなシステムも普及し始めています。
(2015年11月18日 初稿)