人間は、視覚から得られる情報をもとに、自分の位置や周辺に存在する障害物の有無等を把握することが出来ます。あるいは、地図に記載された情報から自身の位置を把握することが出来ます。一方、ロボットや無人走行車などの機器は、人間用に作成された地図では自身の位置を把握することが出来ません。環境地図は、人間が把握するためではなく、ある対象空間(=環境)の中で、ロボットなどの機器が自身の位置や周辺の状況を把握するために使用する地図のことをいいます。
環境地図が最も必要となるケースは、ロボットや無人走行車を移動させる場面です。例えば、ロボットや無人走行車を商業施設や病院内で移動させる場合、空間内の自身の位置を把握させるとともに人や壁などの障害物を避けながら移動させる必要があります。その際、ロボットや無人走行車に複数のセンサー(カメラやレーザーなど)を設置し、センサーから取得したデータをもとに都度環境地図を作成することで、自身の位置を推定し、人や壁などの障害物を避けながら移動することが出来るようになります。このように、取得したデータをもとに自身の位置の推定と環境地図作成を同時に行うことを、SLAM(Simultaneous localization and mapping)といい、自動走行ロボットの実用化に向けては欠かせない技術のひとつと言えます。
環境地図は、屋内測位の分野でも利用されています。Wi-Fiや空間内の地磁気の情報を利用して屋内測位を行う場合、予めWi-Fiや地磁気による環境地図を作成し、スマートフォンに内蔵されたセンサーで実際に取得されたWi-Fiや地磁気の値と比較することで、屋内位置の推定に利用します。
(2017年10月18日 初稿)