コンピュータ科学の1分野としての人工知能は1950年代から存在し、学習・認識・問題解決など人間の知能を模倣できるコンピューターシステムを包含する分野として発展してきました。
技術革新・停滞とともに社会ブーム・沈静を繰り返していましたが、2012年の画像認識コンペティションで深層学習(ディープラーニング)が飛躍的な認識精度の向上を達成してから、近年のAIブームへと突入しました。
AIブームを支える深層学習は非構造化データの処理と親和性が高いことから、空間情報分野では画像や点群から主題情報を取得する研究等が進められています。
一例として、衛星画像や空中写真からの地物認識や変化抽出が挙げられます。
従来もある程度の自動処理は行われてきましたが、人工知能には目視による修正や地物変化の意味づけといった高度な作業の代替が期待されています。
また、車載画像・LiDARから道路沿道の地物を認識する研究も進んでおり、自動運転のための高精度三次元地図作成の自動化などが実用化されつつあります。
自動化が進む一方で、空間情報技術者が人工知能にとって代わられるという懸念もあります。
英オックスフォード大学のオズボーン准教授らは「消える、なくなる可能性が高い仕事・職業」の一つとして測量技術者や地図作製技術者を挙げています(Osborne、2013)。
今後は、データ作成を人工知能で代替する研究と同時に、データに付加価値をつけるといった創造的な取組みが肝要となっていくでしょう。
参考文献
今井靖晃. “AI(人工知能)が空間情報技術を変える?!”. 測量. 2017, 8月号, p.28
Carl Benedikt Frey and Michael A.Osborne (2013). “THE FUTURE OF EMPLOYMENT:HOW SUSUCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION ? ” http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf,2017.9.22(引用日)
(2017年10月4日 初稿)