河川、ダム湖、海域等の水や地下水は、飲料水、農業用水、工業用水、水産用水などに利用されており、その用途に適した水質を保全することが重要です。現状の水質に影響を及ぼす可能性のある工場・事業場の立地や埋立て等の各種開発事業の実施にあたっては、その内容や規模に応じて環境影響評価を行います。また、ダム湖のアオコによる利水障害、内湾の貧酸素水塊や赤潮による漁業被害など、現状の水質に問題がある場合は、その改善対策が必要です。水質シミュレーションは、このような事業の計画段階において、事業の目的や特性に応じた水質項目(水温、塩分、濁り、有機物、栄養塩、溶存酸素など)の変化を予測し、適切な計画の立案を支援するツールとして活用されています。
水質シミュレーションでは、水の流れと水質の変化に関する物理的な理論式に化学生物的な変化過程を組み込んだ基本方程式をコンピュータで計算可能な形式に変換したプログラムを作成し、これに流入負荷量や気象等の外的条件をインプットして計算を行います。計算結果は現地で取得した観測データと比較し、モデルが現地事象を説明できるかを検証したうえで事業実施による水質変化を予測します。
水域の水質は、水の流れ、工場・事業場排水、生活排水、農業排水などの流入負荷、水域内に堆積したヘドロからの負荷、あるいは自然の有する浄化機能等、様々な要因の影響を受けています。水質シミュレーションでは、地域の特性に応じて適切なモデルを構築し、かつ、より正確な外部条件データを入力することが、モデルの精度を左右します。
最近では、コンピュータ性能や現地データ取得技術等の発達に伴い、目的によっては、より広範囲かつ細かな空間解像度、長期間での計算が求められるようになっています。
(2019年05月15日 更新)
(2015年01月13日 初稿)