地理空間情報技術

情報技術は、データを蓄積し、検索し、交換するためのシステムを作るための技術や利用法ですが、地理空間情報技術 (GIT) は、扱う情報の中に、地理空間情報が含まれることに、特徴があります。そして、地理空間情報の具体例として、地図があります。情報とは、意味や価値をもつデータのことを指します。地図は、それを見た人が、自分はどこにいるか、目的地に向かうにはどうすればいいかなど、自分にとっての意味や価値を判断できるデータ、つまり「情報」です。
情報を作るためには、材料になるデータを取得する必要があります。しかし、めちゃくちゃに集めても役にはたちません。前もって、どのような情報を作るのか、そのためにどのようなデータが必要になるかを、はっきりさせるべきです。そしてこれらのことをまとめて仕様書にします。これを空間データ製品仕様書と呼びます。仕様書は、データを作るためのモデルであり、データに与えられる意味も、そこに示されます。このようなモデルを作ることを、モデリングと言います。そして、仕様書に従ってつくられたデータは、地理空間データといいます。
さて、公開可能な地理空間データは、公開用のデータベースの中で管理されることが多いですが、そのデータを説明するデータであるメタデータと共に管理されるべきです。そうしないと、利用者はデータの意味や自分にとっての価値を判断することができません。例えば、AEDの設置箇所を示すデータファイルが見つかったとしても、それはいつの時点のファイルなのか、とか、だれが作ったのかがわからないとしたら、その価値をどう判断するでしょうか。
次に、データに意味や価値を持たせる方法の一つに、空間解析があります。例えば、豪雨による低地の洪水被害区域や、山地の崩壊区域の想定、そして、工場排水が河川や海に及ぶす影響を評価したり、地域の人口変化を予測したりすることは、すべて空間解析ですが、個々には地形解析や水質汚濁解析や人口動態予測などと呼ばれます。解析結果は地理空間データの一部として取り込まれ、最終的にハザードマップや人口分布予測図などの地理空間情報として表現されます。
今日多くの場合、データや情報はインターネットなどの情報通信手段を介して交換されます。交換を円滑に行うためには、交換されるデータの形式や交換のための手続きが標準化されているべきです。それらの標準は、GITの知識を使ってつくられる規則です。
さて、地理空間情報技術は、情報を提供するための技術なので、表現法は重要な要素技術です。今日では、平面上に投影された地図のみならず、対象箇所の詳細な情報を呼び出すことができる対話型の地図や、スマートフォンやヘッドセットを使った拡張現実情報など、様々な情報表現手段が発展しつつあります。将来は、ウェアラブルなデバイスを通じて、脳に直接的に情報が伝わり、現実にはないはずのものごとを見たり、聞いたり、触れたりするようになるかもしれません。

[参考文献]
[1] Morishige Ota and Reese Plews (2015). Development of a software tool as an introduction to Geospatial Information Technology based on geospatial standards,
Cartography and Geographic Information Science, Vol. 42, Issue 5, pp. 419-434, Tayler & Francis, http://dx.doi.org/10.1080/15230406.2015.1031701

(2019年10月11日 更新)
(2014年12月04日 初稿)

English

Geospatial information technology

定義

地理空間情報技術とは、地理空間情報のモデリング、取得、管理、解析、交換及び表現を行うための情報技術です[1]。地理情報技術や空間情報技術ともいいます。