猛禽類調査は多くが環境影響評価の1項目として実施され、主な手法は猛禽類を直接観察する現地調査です。調査には、飛跡や行動を記録する行動圏調査、巣の位置を特定する営巣地調査、雛の生育状況を確認する繁殖状況調査等がありますが、これらの調査は全て保全対象ペアの行動圏の内部構造(営巣期の高利用域、採食に利用する地域等の詳細な利用状況)を推定するための情報の記録が目的です。この目的に合わせて、対象種の生態や文献の生息情報に応じた必要な調査を組み合わせて実施します。行動圏の内部構造は、現地調査で得た記録をGISソフトで整理し、特定の利用を示す記録を抽出、地図上に表示して推定します。例えば、狩りや飛翔中の探餌行動の記録を抽出し、それらの記録から採食に利用する地域を推定します。推定した行動圏の内部構造は事業計画と重ね合わせ、位置関係を整理することで影響の程度を検討します。以上の猛禽類調査結果が保全対策立案に活用されます。
さらに、工事中、建設物供用時はモニタリング調査、事後調査を実施することで、保全対策の有効性や生息への影響を確かめ、影響があると判断した場合は追加対策を検討して影響低減に努めます。
猛禽類調査や保全対策の手法はまだ発展途上で、現在も研究されています。近年では対象個体にGPS発信機を付けて位置を記録する手法があり、直接観察出来ない範囲、時期のデータ取得により調査精度向上が期待されています。
参考文献
・環境省自然環境局野生生物課(平成24年12月):猛禽類保護の進め方(改訂版)-特にイヌワシ、クマタカ、オオタカについて-
(2015年11月18日 初稿)