水中、特に港湾や河川といった水域は透明度が悪く、濁りの影響で光学カメラによる映像を取得することは難しいことが知られています。そこで、近年、高周波で多数の指向性(照射幅)の狭い音響ビームを水中で発信し、反射される音の強弱や陰影を濃淡に変換し、映像化する技術が開発されています。
例えば港湾では岸壁や防波堤の施設の老朽化が問題となっていますが、濁りのある水中では光学カメラや目視による点検は視界が悪いため非常に難しく、時間がかかることが課題とされてきました。この課題に対し、水中音響ビデオカメラを船に固定し、岸壁などに沿って走りながら撮影することで、連続的にその音響映像を短時間で得ることができます。それらを繋ぎ合わせて画像化することをモザイク処理といい、何度も船で岸壁沿いを走り、データを取得する範囲(深さ)を変えながらモザイク処理することで、水を抜いて撮影したような岸壁の側面の画像を得ることができます(望月、2013)。
この技術は濁りの激しい河川・湖沼や夜間における、魚類や生物の連続観察や水生植物の計測等にも活用されています。また、近年では光の届かない深海底での活用も進められていて、日本の新たな鉱物資源として注目を集めている海底熱水鉱床から熱水が噴出している様子を撮影したり、重機が海底で作業する際に周囲の確認を音響ビデオカメラで行えるようなシステムの開発も進んでいます(松本、2016)。
参考文献
望月将志、浅田昭(2013):水中音響ビデオカメラ. 映像情報メディア学会, 67(3): 202-205
松本さゆり(2016):水中音響ビデオカメラを用いた水中建機の動作の視認実験. 月刊建設, 60(1): 21-23
(2019年05月15日 更新)
(2016年11月09日 初稿)