水は、水蒸気、降水、地表水、地下水、海水など、形態を変えながら、時間と空間の中を循環しています(図―1)。例えば、都市化により地表面が被覆されると地下浸透量が減少し、地表流量が増大します。その結果、内水氾濫や河川のピーク流量の増大、地下水位低下が生じます。これらは水循環の一部が損なわれることによって生じる現象ですので、その対策には流域全体での取り組みが必要です。また関係者も国や自治体、民間、研究機関など多岐に渡ります。水循環基本法は、このような問題に対して横断的な対応を図るための法律です。
全31条よりなり、水循環を「水が、蒸発、降下、流下又は浸透により、海域等に至る過程で、地表水、地下水として河川の流域を中心に循環すること」、健全な水循環を「人の活動と環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環」と定義しています(第2条)。また、8月1日を水の日と定め(第10条)、内閣総理大臣を本部長とする水循環政策本部を設置し、水循環に関する施策を総合的かつ計画的な推進を図るため、水循環基本計画を定めることとしています(第22条~第30条)。
この法律は、水循環の重要性、水の公共性、健全な水循環への配慮、流域の総合的管理、水循環に関する国際的協調を謳った理念法です。今後、具体的な施策のための法令が整備されていくことで、水循環の健全化の推進が期待されます。
参考文献
水循環政策本部、2016年9月29日
国際航業株式会社創立60周年記念出版プロジェクト(2007):モデリングとデザインの調和、pp274-276、国際航業株式会社
(2016年10月24日 初稿)