高潮とは、台風や発達した低気圧に伴う海水の吸い上げ効果や吹き寄せ効果などによって生じる海面の高まりを指すもので、標高の低い沿岸市街地等へ大きな浸水被害を及ぼす災害です。日本では1959年の伊勢台風以降、甚大な高潮災害は発生していませんが、海外では、2005年にアメリカを襲ったハリケーン・カトリーナや、2013年にフィリピンを襲った台風30号(ハイエン)によって大規模な高潮災害が発生しています。
日本沿岸では、高潮による影響を受けやすい低平地への都市機能の集中や、地下空間利用の進行によって、高潮に対する防災機能が脆弱化しており、対策の必要性が高まっています。従来の高潮対策は、既往最大の高潮を設計外力とした海岸堤防等の整備が主体でしたが、これらのハード対策には費用も時間も必要なため、人命を守ることを目標としたソフト対策が平行して進められるようになりました。そのために、国は平成16年に「津波・高潮ハザードマップマニュアル」を策定し、沿岸市町村では高潮ハザードマップの作成が進められています。しかし、その作成率は未だに低い状態に留まっています。
今後は、地球温暖化による海水面の上昇、台風の巨大化が叫ばれるなかで、対策施設の能力を超える規模の高潮が発生する可能性があるため、今までの想定以上の規模の高潮による浸水想定区域の周知と安全な避難先などを示したハザードマップの整備や、確実な避難体制の強化などが求められています。
参考文献
・高潮浸水想定区域図作成の手引き Ver.1.00 (平成27年7月 国土交通省 港湾局 海岸・防災課他)
(2015年11月18日 初稿)