高潮浸水想定区域図は、水防法第14条の規定に基づき都道府県が作成するものです。作成に際しては、想定し得る最大規模の外力(台風や低気圧)を設定した高潮浸水シミュレーションにより浸水範囲、浸水深、浸水継続時間を想定し、都道府県知事が高潮浸水想定区域図として公表します。自然災害における対策の考え方として、比較的高い頻度で発生する事象(レベル1)と頻度は低いが発生した際の影響が甚大な事象(レベル2)に分けられますが、高潮浸水想定区域図は「想定最大規模(レベル2)」の高潮による浸水を表した図面であり、市町村長は高潮浸水想定区域図をもとに避難場所その他の必要な防災情報を加えて、高潮ハザードマップを作成し、住民等に周知することになっています。
高潮浸水想定区域図作成の流れは、以下のとおりです。
① 高潮解析のための地形・粗度・構造物モデルの作成
② 想定する外力(台風や低気圧)等の条件設定
③ 海域の波浪推算・高潮推算の実施
④ 河川域の水位計算の実施
⑤ 陸域の浸水計算の実施
⑥ 最大浸水深及び浸水継続時間の算定
⑦ 高潮浸水想定区域図の作成
想定し得る最大規模の外力としては、日本における既往最大規模の台風である室戸台風(1934年)や伊勢湾台風(1959年)の規模(中心気圧、台風半径、移動速度など)に基づいた想定台風及び2014年に根室で顕著な高潮を発生させた低気圧や各海岸で顕著な高潮・高波を発生させた低気圧に基づいた想定低気圧を設定し、各海岸において大きな潮位偏差や波高をもたらす経路を選定します。また、想定する台風や低気圧の襲来が大潮時の満潮や洪水の発生と重なる可能性があることから、最悪の事態を想定した潮位条件や河川流量が設定されます。
2024年7月現在、高潮浸水想定区域の指定や区域図の作成が各都道府県で進められており、既に検討が終了している都道府県ではホームぺージで高潮浸水想定区域図が公表されています。
[参考文献]
農林水産省・国土交通省(令和5年4月):高潮浸水想定区域図作成の手引きVer.2.11
国土交通省HP:https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kaigan/takashioshinsui_manual.pdf (2024/07/12)
(2025年2月13日 初稿)