斜面安定解析

斜面の安定計算手法は、斜面内にすべり面を仮定して滑動抵抗力(又は抵抗モーメント)と滑動力(又は滑動モーメント)の比で定義される安全率を算定するすべり面法が多く用いられています。

すべり面法には、斜面中に仮定するすべり面の形状により、平面すべり面法、円弧すべり面法、複合すべり面法、非円弧の任意すべり面法等の多くの計算式が提案されています。これらの計算手法は、いずれも斜面の安定性が失われ、地盤がせん断破壊を生ずる直前の極限平衡状態における力のつり合いを考えて、破壊問題の解を得る極限平衡法と呼ばれています。

ここでは、すべり面法として、最も多くの基準で採用されている円弧すべり面を仮定する簡便分割法(フェレニウス法またはスェーデン法と呼ばれる)の計算式を下図に示します。

簡便分割法での各分割片の安全率(Fs)は、分割片の側面に働く力は釣り合っていると仮定し、分割片底面のすべり面に働く力の釣り合いのみを考慮し、モール・クーロンの破壊基準により、分割片に作用する円弧中心に関する半径Rの円弧の中心Oに関する「抵抗モーメント(MR)」と「滑動モーメント(MD)」の比で表します。円弧すべり面上の土塊全体の安全率(Fs)は、分割された全分割片の抵抗モーメントの合計と滑動モーメント合計の比から次式により求められます。
これまでの経験からは、斜面の安全率(Fs)がFs=1.2~1.5程度であれば、斜面は安定と考えられています。


図1 簡便分割法(フェレニウス法)の安定計算式の例(社)斜面防災対策技術協会 地すべり対策技術設計実施要領(改訂版)平成19年度版

図2 地すべり安定計算に用いるスライス分割の例 道路土工-切土・斜面安定工指針(社)日本道路協会、平成21年度版に追加、加筆

参考文献
・福岡正巳、谷口敏雄(1973)「地すべり調査と対策講座 Ⅴ 地すべり斜面の安定解析」、全国地すべり対策協議会
・山田邦光(1982)「最新の斜面安定工法(設計・施工)」、理工図書
・山田剛二、渡 正亮、小橋澄治、川井正男(1983)「地すべり斜面崩壊の実態と対策」、山海堂
・建設省河川砂防部 監修、急傾斜地崩壊防止工事技術指針作成委員会編集(2000)「新・斜面崩壊防止工事の設計と実例 –急傾斜地崩壊防止工事技術指針-(本編)、(参考編)」、(社)全国治水砂防協会 発行
・(社)土質工学会(1984)[入門シリーズ9 土質工学数式入門]、土質工学数式入門編集委員会
(社)日本道路協会、道路土工-切土・斜面安定工指針、平成21年度版
(社)斜面防災対策技術協会 地すべり対策技術設計実施要領(改訂版)平成19年度版〕

(2017年12月22日 更新)
(2015年11月18日 初稿)

English

Slope stability analysis

定義

斜面(自然斜面及び人工斜面)の安定性を安定計算により安全率を算出して評価し、対象斜面の崩壊や地すべり等に対する危険性の判定や、斜面を安定化させる対策工の規模・数量等を検討するために必要な必要抑止力の算定や地下水低下量を算定する一連の解析作業を斜面安定解析と呼んでいます。斜面安定解析の安定計算は、一般的には土質力学によるモール・クーロンの破壊基準を適用したすべり面法(極限平衡法)が用いられています。