砂浜海岸では、波や流れの作用によって砂礫が移動する漂砂現象が常に起きており、海底地形や海岸線形状などに変化をもたらす要因となっています。海岸地形変化予測モデルは、場所ごとの波のエネルギーや流速を与条件として漂砂量を算定し、その収支の結果で生じる地形変化を平面的に計算するシミュレーションモデルです。
海岸地形変化予測モデルには、10年程度の長期的な海岸線や等深線の変化の予測に用いられるモデル、一時化~1年程度の短期的な平面地形の変化の予測に用いられるモデルなど種々の予測モデルが開発されており、シミュレーションを行う際には解析目的に合致したモデルの選定が重要になります。シミュレーション結果は可視化ツール等を用いて等深線変化図や地盤高変化図等として作図します。
海岸地形変化予測モデルを用いると、侵食傾向にある海岸の長期的な海岸線後退量の予測や漂砂制御施設を設置した場合の対策効果の定量的な評価が可能であるため、海岸保全計画を立案する際などに活用されます。また、漂砂による航路埋没現象の再現やその対策効果の定量的な評価が可能であるため、港湾や漁港の維持管理計画を立案する際になどにも活用されます。ただし、将来にわたる地形変化を時々刻々、正確に予測することは非常に難しいため、測量地形との比較などにより予測精度を定期的に検証しつつ、得られた知見をモデルの改良に役立てることが望まれます。
(2017年9月22日 初稿)